エンディングノートは引継書であり、信託です。


近年、さまざまな分野で多様性を認めようという機運が高まってきています。


しかし残念ながら、特に老齢期における「おひとりさま」への理解は、進んでいるとは言い難い状況です。社会的な仕組みのほぼすべてが、「呼べばすぐに駆けつけてくれる家族がいる」ということが原則となっているからです。

誰にも迷惑は掛けたくないと思っていても、病気や認知症になったとき、そして亡くなった後には、どんな人でも必ず「家族かそれに代わる誰か」の助けが必要となります。


今後、増えつづけるであろう「おひとりさま」。家族に頼ることなく安心して老後とその先を迎えるための終活について考えてみましょう。

今回コラムを書いたひと

生駒 貴徳 さん

いこま・たかのり

一般社団法人こうべつながり・代表理事

2016年、一般社団法人こうべつながり設立。これまで200名超の高齢者サポートを実施。現場経験等を活かし、啓蒙活動も積極的に行う。

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おひとりさまのための死後手続き相談窓口のわたしご(「わたしの死後手続き」の愛称です!)では、提携パートナー法人が個々で持つ死後事務に関するノウハウ・情報をコラム形式でお伝えしていきます。今回は、一般社団法人こうべつながり 生駒貴徳さんのコラムになります。

SDGsにも通じるおひとりさまに必要な5つの契約

2040年には人口の約半分が独身になると言われています。つまり「おひとりさま」がより一層増えます。

一方、介護保険や成年後見制度そして民間サービスも、大きく言えば民法も家族・親族がいる前提で作られています。そのために、公的制度や民間サービスを利用するための各種契約時には、本人以外の同意や緊急連絡先など、いわゆる家族の役割である身元保証人が欠かせないのが現実です。

そして人は自分で自分をあの世へ送ること、自分の死後を片付けることが出来ません。ここにおひとりさまの課題と社会問題が生じています。

そこでご紹介するのが「おひとりさまに必要な5つの契約」です。

この5つの中でも、特におひとりさまに必須で、準備が必要なのが、身元保証人と死後事務をしてくれる人を確保しておくことです。つまり、おひとりさまは『契約』によって、本人と受任者の間の家族的なつながりを擬制しておく必要があるのです。

身元保証人と死後事務執行人を確保しておくこと。これが国の施策である「地域包括ケアシステム」や、SDGs目標11「住み続けられるまちづくり」の一番根っこで必要なことだと考えています。

死後事務委任契約と遺言書の違い

遺言書は自分の死後に残った財産をどのように分与するのかを指定し託す書面です。そして遺言書は死後に開示されます。つまり、葬儀や納骨あるいは死後の各種手続きを遺言書に記しても遅いのです。

また、遺言書に記すのは良いのですが、法的拘束力はありません。遺言書でお願いされた人物があなたの希望を実施・執行しなくても罰則はないのです。そこでお勧めなのが財産以外の事務を託す死後事務委任契約です。

国の統計では死後事務は50~60項目あるとも言われています。最近は「おひとりさまの死後手続き」といったテーマで週刊誌でも取り上げられることが多いですね。私たちが資料請求者に発行している終活情報『つながりだより』でも、死後事務への関心の高さが伺える出来事が最近ありました。

エンディングノート、成年後見制度資料、遺言書の書き方、身元保証人セミナー資料などなど、何度となく終活お役立ち資料のプレゼント企画を実施しています。結果、今まではおよそ発行総数の1~2%ほどの方からの問合せでした。

ところが、「知っておきたい死後の手続き45項目」と題してプレゼント企画を実施したところ、思いもよらず、発行総数の10%以上の方々から送付依頼の電話を頂き、スタッフも嬉しい悲鳴でした。

エンディングノートは引継書であり、信託

死後事務委任契約とは、あなたが亡くなった後のことをお願いする人(受任者)に、葬儀や納骨・役所への諸手続き・各種解約や生前にかかった費用の精算など、あなたの死後に起こる事務についての代理権を与えて、受任者に委託する委任契約をいいます。

しかし、受任者に、あなたの考えやお願いする内容や状況などを事前に伝えておかなければ、受任者はどうしてほしかったのか、わかりませんよね。そこで必要な準備が、あなたの現状を把握することです。つまり、エンディングノートを書いておくことです。

ゆえにエンディングノートが終活のすべての始まりなんです。

終活の第一歩であるエンディングノートをひと言で解説すると、「自身が伝えたいことをまとめるノート」です。過去のこと・現在・これからの希望、身体のこと、最期への思いなど、伝えたいこと、伝えたい相手はそれぞれ違います。それを一冊のノートにまとめるのが、エンディングノートです。

そして、もうひとつお伝えしたいキーワードが〈信託〉です。

信託と聞くと一般的に浮かぶのは投資信託ですかね。では、この信託という意味。これは文字そのままに、「信じて託す」です。投資信託でいえば、金融機関を信じて自身の資産運用を託します。言い換えれば、あなたの想いと財産を、信頼できる金融機関の担当者に託すということ。終活においてもこの信託がとても重要なのです。

あなたは誰を信じて、あなたの想いと願いを託しますか? やはり家族ですよね。しかし、おひとりさまは家族ではない第三者に託す必要があるわけです。そして、その第三者に託す内容をまとめるのがエンディングノートです。

投資信託でも書面を作りますよね。つまり、終活とは信託でありエンディングノートは引継ぎ書なんです。そしておひとりさまの終活は、身元保証人と死後事務執行人に信託して、あの世への引越し準備をすることだと、私どもは考えています。

まとめ ~団塊の世代の特徴を表す言葉~

現在終活をしている多くは団塊の世代かと思います。そんな団塊の世代が言われている特徴のひとつをご紹介します。

「親を看取る最後の世代、子どもに看取られない最初の世代」

うなづけますか? 常に時代の先端を走ってきた皆さんだからこそ、今の終活時代でも先頭を走ってほしい――。エンディングノートを書くことが当たり前の時代になる、最初の世代になっていただきたいと願っています。


一般社団法人こうべつながり・概要

~価値観や意思を尊重し、人生の伴走者となる~

一般社団法人こうべつながりは、「一生涯関係を持ち続ける家族のように、人生の伴走者となって、つながりを求めるすべての人の意思を尊重し、安心して暮らせる社会を実現する」ことを目的とし、もしもの時の安心サポート(身元保証・生活支援・死後事務・葬送支援・顧問支援)として「つながり会員制度」、および「終活、エンディングノートの普及活動」を中心とした事業を行う。

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