身元保証人と成年後見人~その役割と違いについて~


近年、さまざまな分野で多様性を認めようという機運が高まってきています。


しかし残念ながら、特に老齢期における「おひとりさま」への理解は、進んでいるとは言い難い状況です。社会的な仕組みのほぼすべてが、「呼べばすぐに駆けつけてくれる家族がいる」ということが原則となっているからです。

誰にも迷惑は掛けたくないと思っていても、病気や認知症になったとき、そして亡くなった後には、どんな人でも必ず「家族かそれに代わる誰か」の助けが必要となります。


今後、増えつづけるであろう「おひとりさま」。家族に頼ることなく安心して老後とその先を迎えるための終活について考えてみましょう。

今回コラムを書いたひと

川鍋 土王 さん

かわなべ・つちお

一般社団法人えにしの会

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おひとりさまのための死後手続き相談窓口のわたしご(「わたしの死後手続き」の愛称です!)では、提携パートナー法人が個々で持つ死後事務に関するノウハウ・情報をコラム形式でお伝えしていきます。今回は、一般社団法人えにしの会 川鍋土王さんのコラムになります。

高齢者が必要とする身元保証人(身元保証サービス)について

一般的に身元保証人とは、身元を保証する人で、雇用契約時に損害担保を目的として会社から身元保証書の提出が求められます。また、身元保証人は身元保証書によって損害担保だけでなく信用のある人物として保証する意味もあります。

身元保証サービスとは身元保証人を代行する団体によって提供されるサービスです。サービスの内容や料金などは運営元の企業・団体によって大きく異なります。身元保証サービスの主な形態は以下の3種類です。

①入院時に病院から求められたとき

多くの医療機関は、入院時に身元保証人(身元引受人)を求めます。厚生労働省研究班による研究では6割を超える医療機関が身元保証人を必要としていると結果が出ています。なかには身元保証人がいないと入院が認められない医療機関もあります。

身元保証人の役割は入院費の支払い保証と緊急連絡先です。本人に支払い能力がなければ身元保証人が保証します。急変などが発生したら、医療機関は身元保証人に連絡します。また、本人による意思決定が確認できない状態であれば、治療方針の判断も求められます。

②介護施設に入居するとき

介護施設へ入居する際にも身元保証人が必要です。身元保証人は基本的に1人ですが、身元保証人と連帯保証人を1人ずつ決めなければならない施設もあります。

介護施設において求められる役割は緊急連絡先や治療の際の手続き、月額費用の保証です。施設利用時に体調が悪くなった場合、施設は身元保証人に連絡します。その後の医療機関とのやり取りや、入院等の手続きも身元保証人の役割です。

さらに、被保証人が月額費用を滞納した場合、身元保証人が本人の代わりに支払います。

③亡くなったとき

被保証人が病院や介護施設等で亡くなったとき、身元保証人が遺体を引き取ります。その後、葬儀の準備やさまざまな事務手続きも行います。介護施設に入居していた場合、退去手続きも行わなければなりません。

また、未払い料金があれば精算し、部屋の片付けや遺品の引き取り作業も担います。

成年後見人について

成年後見人とは、認知症などで判断能力が低下した方の金銭、財産管理や身上監護(生活環境の調整及び契約手続きなど)を行う法定代理人のことで、民法で定められています。

成年後見制度には、「法定後見」と「任意後見」の2種類があり、「法定後見」は、ご本人の判断能力が低下した後、ご家族等が家庭裁判所に申し立てを行い、家庭裁判所が成年後見人を選任します。一方、「任意後見」は、ご本人の判断能力が低下する前に、あらかじめ任意後見人になる方を決めておき、判断能力が不十分になった時点で、後見活動を開始します。

いずれを利用する場合でも後見人は、財産管理と身上監護を行うことは共通しています。

成年後見人と身元保証人の違いについて

成年後見人と身元保証人の違いをもう少し細かく見てみましょう。

成年後見人は、ご本人が高齢者施設を退去するときや医療機関を退院するときに調整・手続きを行うことや、施設から病院へ搬送され入院した際の手続きを行うことなど、一部役割が重複している部分もありますが、通常、債務の保証までは行いませんし、身元保証人になることはできません。

本人に代わって契約行為や手続きを行うのが本来の職務ですので、救急搬送時に病院に駆けつけたり、退院時に付き添ったりすることもしません。これらは一般的に家族=身元保証人が行うことと想定されているからです(ただし、成年後見人のなかには、緊急駆けつけ等の生活支援を行っている方もいるようです)。

よって、成年後見人がいても、身元保証人の役割をすべて果たせるわけではないため、別途身元保証人を立てることを求める高齢者施設も少なくありません。

とはいえ、成年後見人は、ご本人の財産を管理しているため、ご本人に代わって入居費用などの支払いをすることはできます。そのため、成年後見人が選任されている場合、費用の支払いは問題なく行ってくれるだろうとの信頼から、身元保証人がいなくとも入居を認める高齢者施設も存在します。

まとめ ~身元保証人、成年後見人が必要な際には~

身元保証人、成年後見人が必要な際には、まずお近くの地域包括支援センターにご相談されることをお勧めします。

地域包括支援センターとは、介護・医療・保健・福祉などの側面から高齢者を地域ぐるみで支える、高齢者の何でも「総合相談窓口」です。「身体が不自由でゴミ出しが大変」「通院の移動手段に困っている」「介護を受けずに済む為の予防をしたい」など……、高齢者の暮らしにまつわる不安要素を気軽に相談できる場所です。

終活も含めて、早めの準備が必要な時代だと思います。


一般社団法人えにしの会・概要

~将来に亘って、安心して生活していくための社会創りをサポートする~

一般社団法人えにしの会は、引越し先の入居時や入院時などに必要とされる保証人になる身元保証支援、日常の暮らしの生活支援から万ーの支援、そして亡なった後の葬儀及び納骨支援までのサポートを行うほか、要望に応じて、弁護士などの専門家と連携して金銭管理、法律支援も行う。「もし自分たちが会員の家族であったら、どうすれば一番安心してもらえるか」を念頭に置き、紹介者や介護従事者と連携しながら、地域に密着したサポート体制を築いている。

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