リレーコラム:資産を有意義に有効に活用する仕組み(システム)づくり


近年、さまざまな分野で多様性を認めようという機運が高まってきています。


しかし残念ながら、特に老齢期における「おひとりさま」への理解は、進んでいるとは言い難い状況です。社会的な仕組みのほぼすべてが、「呼べばすぐに駆けつけてくれる家族がいる」ということが原則となっているからです。

誰にも迷惑は掛けたくないと思っていても、病気や認知症になったとき、そして亡くなった後には、どんな人でも必ず「家族かそれに代わる誰か」の助けが必要となります。


今後、増えつづけるであろう「おひとりさま」。家族に頼ることなく安心して老後とその先を迎えるための終活について考えてみましょう。

今回コラムを書いたひと

森 寛之 さん

もり・ひろゆき

一般社団法人ココ・ガーディ 事務局長

一般社団法人ココ・ガーディ」創立メンバーであり現事務局長。相族・遺言信託を専門に取り扱う「テトラ法務行政書士事務所」代表。宅地建物取引士。

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おひとりさまのための死後手続き相談窓口のわたしご(「わたしの死後手続き」の愛称です!)では、提携パートナー法人が個々で持つ死後事務に関するノウハウ・情報をコラム形式でお伝えしていきます。今回は、一般社団法人ココ・ガーディ 森寛之さんのコラムになります。

終活は「誰かに詳しく自分自身を伝えること」から

ある日、M様(70代後半、女性)が事務局を訪れました。

M様はご自宅の売却をご希望になっており、ご自身で家財の処分手続きも終えられているというお話でした。M様には障碍者である年の離れた弟様があり、ご兄弟の中でご自身だけがその弟様を物心両面から支えてこられたとのことでした。M様はご自宅を売却して得たお金をその弟様に少しでも残したいとお考えで、ご自身は年金の範囲内で生活できる費用のあまりかからない施設へ入所し、当事務局にその身元保証人になってもらいたいとのご希望でした。

M様と私とのお話は2時間にわたる長いものでありましたが、その話柄のほとんどが弟様のことであり、ご自身の葬儀や納骨のことなどは二の次といったような様子であったと記憶しています。そこで、M様にとっての終活とは、自分に先立たれた弟様への心配によってそのほとんどが占められているのだろうと、このとき私は理解していました。

『以心伝心』は誤解の第一歩

ご契約締結後のM様には、私たちにご自身のご希望を詳しく聞いてもらったという意識があり、少し安心もされていたように思えました。私もまた、M様の弟様へのお気持ちを知り、弟様に関するM様のご希望も理解していたつもりでおり、そのためにはどのような方策を立てればよいかなど、事務局内で検討しておりました。

ある日、何気なくM様に私はM様自身の納骨のことについて尋ねました。弟様は葬儀に出席することもお骨を拾うことも難しかったからです。この質問自体が弟様に関する話柄から派生したものでした。すると、M様はご自身の葬儀について細かな希望をたくさん話し始めました。●●という僧侶を読んでほしい、2番目の妹様は葬儀に呼ばないでほしい、僧侶が反対してもお骨は絶対に海への散骨にしてほしい、散骨する海は●●が見える辺りにしてほしい……。

会うたびにM様と私は弟様のことばかり話していたので、私は先入観でM様はご自身の葬儀にはそれほどご希望はないのだと思い込んでおり、同時にM様もまた、弟様のことを一緒になって考えてくれる私たちが、自身の(葬儀や宗旨の)こともわかってくれていると錯覚されていたようで、互いに、話し合わなくてはならないことが他にもたくさんあるのだということを、再確認することとなりました。

元気で、しっかりしている間に準備を

M様はお元気でしたのでそれほど心配はありませんでしたが、ご自身やご家族が重篤な病を得られている、あるいはご高齢であるなどの理由により、急いで不動産を売却しなくてはならないということもしばしば見受けられます。そうなると実勢価格よりも安価に不動産を手放さざるを得ないなどということにもなりかねません。

また、M様が仮に、効力のある遺言を遺されない場合には、弟様以外のご兄弟や甥姪にも相続権が生じ、少しでも弟様に財産を遺してやりたいという希望も果たされなくなってしまいます。遺言状が効力を得るためには、遺言時に遺言内容及びその法律効果を理解・判断するために必要な意思能力がなければなりません。認知症状が進んでしまうと、遺言状を作成することが難しくなるため、M様にも、弟様にすべての財産を遺せるよう私共でサポートさせていただいて公正証書遺言の作成をお願いしました。

希望の実現は、正確な手続きを踏むことから

効力を有する遺言の作成を行うためには決められたルールを守らなくてはなりません。また、効力ある遺言を作成できたとしても、その内容を確実に実行してくれる人間を遺言執行者として指名しておかなければ意味がありません。

それは遺言という法律的要素が強いものだけではなく、例えば、納骨先のお寺もまた確実に指定しておかなくてはなりません。実際にあった問題として、宗旨によっては同じ名の寺院が同じ地域に複数存在してあり、亡くなられた方から生前伺っていたお寺の確定に手間取るようなこともあるからです。

仕組み(システム)づくりを念頭に置く

M様の周到な終活の効果の過半は、M様が亡くなられた後に機能するものです。亡くなられた後、M様自身が直接的に弟様を支えることはできません。つまり、遺産としてどれだけ多額の預貯金を弟様に遺されたとしても、M様が思うようなフォローを弟様が受けられる保証はないのです。

しかしながら、M様が遺された資産を有意義に有効に活用する仕組み(システム)を作り上げておけば、それは実質的には可能となります。〈ご自身の希望=弟様の幸せ〉と考えるのであれば、仕組み(システム)づくりまでも念頭に置いておく必要があるでしょう。

私たちは今、M様とお話しする機会を何度も設け、弟様の将来をどのように設計するのかを一緒に模索しています。また、M様亡きあとも私たちが弟様のお力になれるよう、法定後見の申立て等を視野に入れた法的手続きの準備も進めています。


一般社団法人ココ・ガーディ 概要

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ココ・ガーディは「安心してサービスを利用できること」を活動理念の第一として、契約金等のサービス料金を引き下げるなど、経済的な理由によってサービスを受けられない人を減らし、「本当に必要なサービスのみを契約することで余計な料金を支払うことのない料金システム」を提案。また、利用者と専門家をつなぐ懸け橋として、課題ごとにどんな専門家に依頼すればよいのか、専門家の中でも誰に依頼すればよいのか、実務の内容や料金の高低など様々な項目を専門知識を駆使して比較検討し、最良の解決方法を提供・サポートしている。

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